2020年前期B日程小説の解説です。
高森美由紀「おひさまジャム果風堂」より出展
問1 傍線部①「尻に聞かせていた」とは、拓真がどうしていることのたとえですか。二十五字以内で答えなさい。
解説)背を向けて会話に参加していない様子を見せながら、聞き耳を立てている様子を読み取る。
答)相手の方を向かずに、こっそりと聞いていること。(23字)同意可
問2 空欄A~Cに当てはまる言葉として適当なものをそれぞれ次から選び、記号で答えなさい。
A( エ ) B( ウ ) C( カ )
ア くまなく イ みるみる ウ しこたま エ わざわざ オ しばしば カ こわごわ
解説)A「母ちゃんは行けねえだろ」ということが分かっている状況で、あえて「来るな」という必要のない拒絶の言葉を繰り返すようすから判断する。
B「圧倒的なビリ」「恥をかくため」から、サトミが運動会をはなはだしく嫌っている様子を読み取る。
C「顔をうつむけ」「母さん、怒ってた?」と、母親の顔色を控えめに尋ねる様子を読み取る。
問3 傍線部②「引きつれた声に、拓真は肩越しに振り返った」とあるが、このときの拓真の気持ちとして最も適当なものを次から選び、記号で答えなさい。( イ )
ア 仕事の多忙さを理由に運動会に行こうとしない母に対して、仕事をどうにかできないものかといらだっている。
イ 母に運動会に来て欲しくないサトミの、母を傷つける発言を聞き、思わず母の顔色が気になっている。
ウ 運動会に行ってやれない母にとげのある発言をついしてしまったが、すぐに反省し母を気遣っている。
エ 運動会に誰も来てくれないという悲しみの中で絞り出したサトミの発言を聞き、母を恨めしく思っている。
オ いらついているサトミが遠回しにジャム作りを褒めている言葉を、母がどう受け止めているか気にしている。
解説)「肩越しに振り返る」とは、体はそのままで首から上だけを後ろに向ける動作を示す。アは「いらだっている」が不適当。強いマイナス感情のときは、体全体が振り返るからです。ウは「とげのある発言をついしてしまった」のは拓真になっています。この発言は、サトミが発したものです。エはサトミが悲しんでいるのが間違い。来てほしくないのです。オはジャム作りを褒めてはいません。ということでイが消去法で残ります。
問4 傍線部③の空欄に共通して当てはまる色として最も適当なものを次から選び、記号で答えなさい。( ア )
ア 青 イ 赤 ウ 黒 エ 黄色 オ 茶色
解説)サトミが発した言葉「ジャム作りしかできないくせにっ」に、母は「悲しい顔」をしたとある、また、サトミはそれに「気づいたらしい」とあることから、ともに血の気が引いた青ざめた顔になる。
問5 傍線部④「母ちゃん、ジュース買いに行ってくる」とあるが、拓真がこう言ったのはなぜですか。四十五字以内で説明しなさい。
解説)この発言の前に、母が作ったサトミの弁当が忘れられている情景があります。これに気づいて拓真は適当な理由をつけて外出しサトミに母が作った弁当を届けようと思ったからです。そしてその道中に一人で弁当を食べるサトミのことを思っていっしょに食べてやろうと思うのでありました。
答)母が作ってくれた弁当を、母に気づかれずにサトミへ届け、いっしょに食べてあげたかったから。(45字)同意可
問6 傍線部⑤「拓真は走る。妹の元へ」から傍線部⑧「帰ろうか。帰って家で食うべ」までの拓真の気持ちの変化として最も適当なものを次から選び、記号で答えなさい。( オ )
ア 雨の中またすぐ家に戻るのが面倒でサトミと一緒に体育館で弁当を食べようとしたが、サトミが兄弟だけで一緒に食べるのはおかしいと言ったことに納得し、家でも誰にも遠慮することなく食べることにした。
イ サトミに話しかける前から自分はお腹が空いており、早く体育館で弁当が食べたかったが、雨でぬれた弁当をサトミに食べさせるのはかわいそうだと思い直し、我慢して家のご飯を食べようと考えた。
ウ 朝のサトミの発言で悲しんでいる母にサトミを会わせたくなかったので、体育館で弁当を食べようとしたが、母が学校へ来てしまったせいでどうすればよいのか混乱し、三人で一緒に家に帰るしかなかった。
エ 朝からずっと母に怒っているサトミを落ち着かせたくて体育館で一緒に弁当を食べさせようとしたが、サトミの少しほぐれた表情を見て母に会わせても大丈夫だろうと安心し、二人を会わせることにした。
オ サトミが一人でどうしているのかと心配し、早く弁当を届けて一緒に食べてあげたいと思っていたが、母を気にするサトミの言葉を聞いて三人で食べたいと思い直し、母への思いやりから家に帰ることにした。
解説)アは「兄弟だけで一緒に食べるのはおかしいと言った」とありますが、そんな記載はありません。イは「雨でぬれた弁当」とはどこにも書いてありません。ウは「朝のサトミの発言で悲しんでいる母にサトミを会わせたくなかった」が誤り、もしそうなら母が作った弁当は持ってこないでしょう。エは「朝からずっと母に怒っているサトミ」が間違いです。エが難しかったかもしれません。一瞬は母に対して怒っていましたが、自分の吐いた言葉が母を気づけたことに気づいたサトミは反省をしています。消去法でオだけが残ります。
問7 傍線部⑥「雨に打たれてしょげ返っている万国旗」とあるが、ここで使われている表現技法を次から選び、記号で答えなさい。( ウ )
ア 対句 イ 直喩 ウ 擬人法 エ 体言止め オ 倒置法
解説)それぞれの表現技法を学んでください。万国旗で文が終わっていれば体言止めになりますが、「…万国旗の下、…」と続いていますので体言止めにはなりません。「しょげ返る」が人間の動作です。
問8 空欄⑦に入る言葉として最も適当なものを次から選び、記号で答えなさい。( エ )
ア 引けを取らない イ 足もとに火がついた ウ 骨が折れる
エ 判で押した オ 目が覚める
解説)アは「負けない」、イは「危険がせまっている」、ウは「労力がいる」、エは「まったく同じ」、オは「迷いが去る」の意味です。慣用句を学びましょう。
問9 傍線部⑨「やっぱりドラえもん」とあるが、このとき拓真が「やっぱりドラえもん」と呟いたのは「母」のどのようなところが「ドラえもん」のようだと思ったからですか。最も適当なものを次から選び、記号で答えなさい。( エ )
ア せっかくサトミのために運動会に来た自分に冷たい態度を取るサトミの、人の優しさに感謝しない欠点を見抜いてたしなめるかのように母が叱りに来てくれたところ。
イ 運動会でビリになってしまい誰とも会いたくない様子だったサトミの、どこかに行ってしまいたいという気持ちを読み取って母が傘という道具を持ってきたところ。
ウ 母と心が通い合わず、兄にも率直になれないでいたサトミの、そろそろ謝りたいという気持ちを理解して母がサトミと仲が良かった卓司の傘を持って現れたところ。
エ 運動会でビリになった情けなさや母へのすまなさで泣きそうになっているサトミの、母に会いたいという気持ちを察知して助けに来たかのように母が現れたところ。
オ 一緒に昼ごはんを食べる人がおらず不安で運動会に集中できないでいたサトミの、もう走れないという気持ちを応援するかのように、母が学校まで来ていたところ。
解説)拓真はドラえもんを「いざとなったら助けてくれる」存在と理解しています。ですから答えは、エになります。
問10 この文章の表現の特徴を説明したものとして適当なものを次から二つ選び、記号で答えなさい。( ア )( カ )
ア 「空は灰色」「雷が鳴った」「雨が強まる」など、物語の展開に合うような景色や天気の様子の描写がされている。
イ トシ子の背中を想起させる表現を多用することで、トシ子が子どもに向き合わず愛情をもっていないことが強調されている。
ウ 「妹は朝食に手をつけずに」や「妹はこの世の終わりのような顔で」など、物語は一貫して拓真の目線で描かれている。
エ トシ子は服装など周りの目を気にしない人として、拓真は常に周りに合わせて行動する人として対照的に描かれている。
オ「律儀に毎回言い渡していた」から、サトミは手のかからないしっかりした小学生であることが表現されている。
カ 文章全体を通して、短い文で改行したり現在形で言い切ったりすることで、リズムの良い物語を展開している。
解説)イは、トシ子の背中を想起させる表現を「多用」が間違いです。本文では「ジュースだば冷蔵庫にカルピスがあるよ」トシ子は背中で答えた。と1か所だけです。多用はしていません。
ウは、本文中で「妹」の言葉を使っているのは、1か所だけです。ほとんどが客観視点で書かれています。
エは、拓真は周りに合わせて行動する人とは書いていない。対照的な表現もありません。
オは、律儀に毎回言い渡していたのは、母を見られるのがよほどいやだったからです。しっかりしていたからではありません。
消去法でアとカになります。